9月10日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

論文問題 刑訴法〈9〉
〔捜索・差押えに必要な処分〕
A警部補は、覚せい剤取締法違反被疑者甲を逮捕し、甲の所持する携帯電話を押収したが、覚せい剤の入手先等の電話番号が当該携帯電話に記憶されていることも考えられたことから、携帯電話のメモリー機能から電話番号を確認して入手先等を割り出すこととした。
この場合、携帯電話から電話番号を確認するための法的根拠について説明しなさい。

答案構成例
1.捜索・差押えに必要な処分の意義
2.捜索・差押えに必要な処分の内容・方法
3.事例の検討
4.結論

1.捜索・差押えに必要な処分の意義
(1)意義・根拠
→捜査機関は、令状による場合であると否とを問わず、捜索・差押えに当たって、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる(刑訴法222条1項、111条)
(2)趣旨
→「捜索・差押えに必要な処分」が認められたのは、差押え対象物を発見するため、又は証拠として必要かどうかを確認するためには、ある程度の強制力を行使しなければならない場合があるからである
2.捜索・差押えに必要な処分の内容・方法
(1)対象者
→「必要な処分」を受ける者は、原則として当該捜索・差押えの直接の対象者であるが、当該捜索差押許可状に記載されている物の所有者に限らず、捜索・差押えの必要性・合理性がある場合には、第三者の所有物に対しても必要な処分をすることができる
(2)内容・方法
→捜索・差押えに「必要な処分」は、差押えの目的を達するために必要な範囲のものでなければならない
→条文に挙げられた「錠をはずし、封を開き」は、必要な処分の例示である
→必要な処分は、その内容・方法が目的に照らし社会通念上最も妥当かつ最小限度のものでなければならない
→必要な処分の具体例としては、未現像フィルムの現像、磁気ディスクからの情報のアウトプット、覚せい剤の予試験等がある
3.事例の検討
(1)携帯電話の押収の適法性
→甲の所持する携帯電話の押収は、逮捕の現場での捜索・差押えとして、適法である
(2)電話番号の確認の適法性
→押収した携帯電話には、覚せい剤に入手先等の電話番号が登録されている可能性が高く、これを確認するには、携帯電話のモニターに表示する必要がある
→登録データを破壊せずに携帯電話のモニターに表示できる場合に、これを表示して確認することは、社会通念上最も妥当かつ最小限度のものであるから、必要な処分として認められる
(3)登録データが暗証番号により保護されている場合
→この場合は、その解除を技術者に行わせる必要があるが、その際にデータが消滅する可能性があるので、社会通念上最も妥当な方法とはいえない
→この場合は、検証許可状を得て、技術者を検証補助者として実施する必要がある
4.結論
→登録データを破壊せずに携帯電話のモニターに表示できる場合には、捜索・差押えに必要な処分として(刑訴法222条1項、111条)、携帯電話から電話番号を確認することができる

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刑事訴訟法判例百選 (別冊ジュリスト (No.174))

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図解でわかる刑事訴訟法 (入門の法律)

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9月11日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

「刑法(各論)」学習上の注意点(13)
5.財産を害する罪
〔詐欺罪〕
◇詐欺の罪は、基本的に、被害者を欺き(欺罔)、その瑕疵ある( )に基づいて財物を交付させ、または財産上の利益を取得する犯罪である点で、被害者の( )に反して財物を盗取し、または財産上の利益を取得する犯罪である窃盗の罪、強盗の罪と区別される。
→意思、意思、○
◇「人を欺」くとは、他人をだまして( )に陥らせることをいう。
→錯誤、○
◇欺く行為は、作為に限られ、( )による場合は、詐欺罪を構成しない。
→不作為、×
◇人を欺く行為は、具体的事態のもとで、一般人を錯誤に陥れる( )のあるものでなければならない。
→可能性、○
◇欺く行為の相手方は、財物の( )または占有者であることを要する。
→所有者、×
◇不動産売渡証書を偽造行使して登記官を欺き、自己に( )移転登記をさせた場合、詐欺罪が成立する。
→所有権、×
→登記官は不動産を処分する権限を有しない
◇欺く行為は、広告詐欺におけるように、( )に向けられたものでもよい。
→不特定人、○
◇不正に入手した他人名義のクレジットカードを使用して、( )から物品を購入した場合、( )を欺いたものとして詐欺罪を構成する。
→加盟店、加盟店、○
◇所持金もなく、( )を踏み倒すつもりで食事を注文し、食事後逃走した場合、詐欺罪は成立しない。
→代金、×
→食事を注文した時点で詐欺罪の着手があり、飲食物が運ばれてきた時点で既遂となる
◇飲食店で食事後、所持金がないのに気づき、代金を踏み倒そうと思い、店員のすきをみて( )した場合、詐欺罪が成立する。
→逃走、×
→欺く行為がない

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刑法基本講義―総論・各論

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たのしい刑法 第2版

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