4月29日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

行政法〈17〉
次は、即時強制についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)即時強制の執行は、基本的人権尊重主義から必要最小限度に用いられるべきで、濫用してはならない。
(2)即時強制は、行政上の強制執行とは異なり、相手方に履行義務の存在することを要しない。
(3)違法な即時強制により生じた損害は、国家賠償法が適用される。
(4)即時強制は、目前急迫の障害を除く必要上、直接に個人の身体又は財産に対して実力を加える作用であるので、法律の根拠に基づくことは要しない。
(5)即時強制は、いわゆる行政上の目的達成の手段であるから、憲法の令状主義の適用は受けないが、犯罪捜査等の他の目的に利用することは許されない。

⇒即時強制の定義は長く憶えづらいので、以下のようにその要点を区切ると憶えやすい
⇒即時強制とは、(ア)目前急迫の障害を除くため義務を命ずるいとまのない場合、または(イ)その性質上義務を命ずることによってはその目的を達しがたい場合、に直接人の身体や財産に実力を加える作用をいう
⇒即時強制の具体例は頻繁に出題される。警職法が中心であるが、それ以外にも道交法、銃刀法、伝染予防法などがよく出題されている

正解(4)
(4)誤り。
→即時強制は、直接私人の身体又は財産に実力を加える作用だから、法治主義の下、法律の根拠に基づくことを要する
(1)正しい。
→即時強制の執行は、国民の身体・財産に重大な制約を加えるものであるから、基本的人権尊重主義(憲法11条、97条)に基づき、必要最小限度にとどまるべきで、濫用してはならない
(2)正しい。
→行政上の強制執行は、義務の不履行に対し実力を加えその義務を履行させ、又は義務の履行があったのと同一の状態を実現する作用であり、相手方の履行義務を前提とする
→即時強制は相手方の履行義務の存在を必要としない
(3)正しい。
→直接私人の身体・財産に実力を加える即時強制は、公権力の行使に当たる
→したがって、違法な即強制により生じた損害は、公務員に故意・過失があれば国家賠償法1条が適用される
(5)正しい。
→即時強制は、行政上の目的達成の手段であるから、憲法の刑事手続に関する令状主義(憲法35条)の適用はないが、行政上の目的以外の犯罪捜査等に利用することは許されない

行政法

行政法

はじめての行政法 (有斐閣アルマ)

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