5月31日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

んにちは。水野です。

刑法〈22〉
次は、犯人蔵匿罪についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)「罰金以上の刑に当たる罪」とは、法定刑として罰金以上の刑罰が規定された犯罪をいう。
(2)「罪を犯した者」とは、自らその犯罪を実行した者に限られ、教唆犯・幇助犯として犯した者は含まれない。
(3)「罪を犯した者」が、真犯人であることを要するか、その嫌疑で捜査又は訴追中の者を含むかについては争いがあるが、これを含むとするのが判例である。
(4)「隠避」とは、蔵匿以外の方法で、官憲の逮捕・発見を妨げる一切の行為をいい、作為・不作為を問わない。
(5)判例は、犯人が他人を教唆して自らを隠匿させた場合にも本罪が成立するとする。

⇒「国家の作用を害する罪」における出題頻度のAランクは、「公務執行妨害罪」と「賄賂罪」であるが、次に続くのが本問の場合の「犯人蔵匿罪」(刑法103条)であり、要注意である。成立要件は、(1)「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」又は「拘禁中に逃走した者」を、(2)「蔵匿」し又は「隠避」させること、である。この際、ここで覚えてしまうのが望ましい。

正解(2)
(2)誤り。
→「罪を犯した者」には、その犯罪を自ら実行した正犯者のほか、教唆者、従犯者も含まれるし、予備、陰謀を行った者も、その行為に罰金以上の刑が定められている限り、本罪に当たりうることもちろんである
(1)正しい。
→「罰金以上の刑に当たる罪」とは、法定刑が罰金以上の刑を含む罪をいい、拘留・科料が併せて規定されていても差し支えない
→侮辱罪(231条)は含まれないことに注意(ひっかけ問題としてよく出題される)
(3)正しい。
→「罪を犯した者」の意味ついては、真にその犯罪を犯した者に限るとする見解と、犯罪の嫌疑をうけて、捜査又は訴追されている者をも含むとする見解が対立している
→真犯人かどうかをどのように判断するのか、実際の適用上大きな困難を伴うなどから、判例は後説をとる
(4)正しい。
→問題文のとおり
→不作為の例として、例えば、逮捕の義務を有する警察官が、ことさら犯人の逮捕を怠るときは、不作為によって隠避させるものといえる
(5)正しい。
→犯人が自ら犯人蔵匿罪を行っても犯罪に当たらないが、他人を教唆して自己を蔵匿させた場合には、犯人蔵匿罪の教唆犯が成立するか争いがある
判例・多数説はこれを肯定する
→犯人自身の単なる蔵匿行為等が罪とならないのは、これらの行為は刑事訴訟法における被告人の防御の自由の範囲内に属するからであり、他人を教唆してまでその目的を遂げようとすることは防御の濫用であり、もはや法の放任する防御の範囲を逸脱するからである

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事例から刑法を考える (法学教室Library)

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判例刑法総論 第5版

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