6月21日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑法〈25〉
次は、教唆犯についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)教唆犯は、人を唆し、犯罪実行の決意を生じさせ、実行させることによって成立する。
(2)教唆犯は、正犯に適用される法定刑によって処罰される。
(3)教唆の方法は、明示的であると、黙示的であるとを問わない。
(4)過失犯にも教唆犯が成立する。
(5)被教唆者が責任無能力の場合、判例では間接正犯として処罰している。

⇒共犯からの出題は、出題数が最も多いので、教唆犯に限らず、十分な準備が必要である。本問のような知識問題も多いが、事例問題が多いところでもある。

正解(4)
(4)誤り。
→教唆とは、人を唆して犯罪実行の決意を生じさせることをいう
→過失犯に対する教唆は、犯罪の意思を欠く過失犯に犯罪実行の決意を生じさせることが考えられないので、認められないと解されている
(1)正しい。
→被教唆者が教唆行為の結果、当該犯罪の実行を決意し、それを実行することによって初めて教唆犯が成立する
(2)正しい。
→教唆犯には「正犯の刑を科する」(刑法61条1項)
→正犯の刑を科するとは、正犯の適用すべき法定刑の範囲内で処罰するという意味である
(3)正しい。
→教唆は、特定の犯罪の実行を決意させるような刺激を言語・動作によって与えることであり、その手段・方法のいかんを問わない
(5)正しい。
→教唆犯が成立するには、被教唆者である正犯が実行することが必要であるが、判例は、正犯の行為は、構成要件に該当し、かつ、違法・有責でなければならないとする極端従属性説に立つものとされている
→したがって、被教唆者が責任無能力者の場合、有責性を欠くので、教唆犯は成立しないが、教唆者が責任無能力者を利用して犯罪を実現したといえる場合は、間接正犯として処罰するものとされている
→この点に関し、最判昭58・9・21が、責任無能力者である刑事未成年者を利用して犯罪を行った場合であっても、教唆犯が成立する余地があることを是認するに至った結果、判例も制限従属性説(正犯の行為は、構成要件に該当し、かつ違法であることを要するとする立場ー通説)を採用する方向に大きく一歩を踏み出したものと評されている

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事例から刑法を考える (法学教室Library)

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判例刑法総論 第5版

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