7月30日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

論文問題 憲法〈8〉
Aテレビ局において、公職選挙法に違反する投票干渉が取り上げられ、自らの判断で投票することが難しい知的障害や認知症を持つ人たちが、映像処理がしてあるとはいえ、特定の候補者の名前を書く練習をしていることを連想させる場面が放映された。X警察署では、この映像を端緒として捜査を開始したところ、刑事事件となる可能性が高くなり、全容解明のため、取材ビデオテープを差し押さえる必要が生じた。そこで、押収令状を得てAテレビ局に赴いたところ、テレビ局側では、取材源を明かすことになり、報道の自由取材の自由を侵害すると申し立てた。
報道の自由・取材の自由及び当該押収の適否について説明しなさい。

答案構成例
1.報道の自由
2.取材の自由
3.押収の適否

1.報道の自由
(1)知る権利
憲法21条が保障する「表現の自由」は、本来、思想・意見を外部に発表する自由である
→しかし、国民が自由な表現活動を行うには、広く事実を知る必要がある
→そこで、表現の自由には、表現の受け手の自由である「知る権利」が含まれると解されている
(2)報道の自由と知る権利
→報道は、一定の事実を大衆に伝えるものであり、国民の知る権利と密接な関係にある
→特に、報道機関の報道は、様々な場面で国民に重要な判断の資料を提供し、知る権利に奉仕するものである
→したがって、「報道の自由」は、表現の自由の保障の下にあると解されている
2.取材の自由
(1)意義
→報道は、取材・編集・発表という一連の行為により成立するものであり、取材は、報道にとって不可欠の前提をなす
→したがって、取材活動は公権力の介入から自由でなければならず、報道機関と情報提供者との信頼関係が十分に確保されなければならない
(2)限界
→取材の自由が保障されるとしても、公正な裁判の実現を保障するため、報道機関の取材活動によって得られたものが、証拠として必要と認められる場合には、取材の自由が制約を受けることがある
→さらに、公正な刑事裁判を実現するために不可欠である適正迅速な捜査の遂行という要請がある場合にも、取材の自由が制約を受けることがある
3.押収の適否
→投票干渉の真相を明らかにするためには、映像処理のないオリジナルテープを確認する必要があり、当該ビデオテープは犯罪の成否を判断する上で重要な証拠価値をもち、犯罪立証のために不可欠である
→したがって、公正な刑事裁判を実現するために不可欠である適正迅速な捜査の遂行という要請がある場合ということができる
→X警察署が行った押収は、報道の自由・取材の自由を侵害するものではなく、合憲・適法である
→Aテレビ局は、取材源の秘匿を主張できない

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