9月9日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ
こんにちは。水野です。
刑訴法〈35〉
次は、被疑者の勾留についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)勾留は、被疑者が逮捕されている場合に限られ、任意捜査で在宅中の者をいきなり勾留することはできない。
(2)勾留請求は、やむを得ない事情がない限り、被疑者が身体を拘束されてから72時間以内にされなければならない。
(3)勾留は、被疑者が定まった住居を有しない場合等、法で規定する要件を満たしていない限り行うことができない。
(4)被疑者が住所を述べず、住所が不明なだけでは「定まった住所を有しない」場合には当たらないので、これだけでは勾留の理由にならない。
(5)勾留の請求を受けた裁判官は、勾留の理由がないと認めたときは、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。
⇒被疑者の勾留の問題は、巡査部長試験でよく出題されている。勾留の意義、勾留の目的、勾留の手続、勾留の要件、勾留の期間など確実に押さえておく必要がある。
正解(4)
(4)誤り。
→被疑者が氏名・住居を黙秘しているため被疑者の住居が分からない場合は、もともと被疑者が定まった住居を有しない場合と、定まった住居があるのに黙秘しているために住居が不明である場合の二つの態様が考えられる
→判例は、両者を区別せず、実際に住居が分からないのであるから、「定まった住居を有しない」場合に当たるとしている(東京高判昭27・4・8)
(1)正しい。
→公訴提起前の被疑者に対する勾留請求は、既に逮捕された被疑者に対してのみ認められる(刑訴法207条、204条ないし206条参照)
→これを逮捕前置主義という
→逮捕、勾留の2段階において司法審査を行うことにより、被疑者の拘束についての司法的抑制を徹底させようとする趣旨である
(2)正しい。
→勾留を請求する期限は、警察の送致時間48時間(203条1項)と、検察官の持ち時間24時間(205条1項)とを通じた72時間以内に決められている(同条2項)
(3)正しい。
→勾留の要件としては、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由が認められることのほかに、ア.定まった住居を有しないこと、イ.罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること、ウ.逃亡し、又は逃亡すると疑うに足りる相当の理由があること、のいずれか一つに該当することが必要である(60条3項、207条1項)
(5)正しい。
→207条2項ただし書に問題文の旨の規定がある
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