9月8日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑法〈35〉
次は、共犯についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)二人以上共同して犯罪を実行した場合は、共同正犯である。
(2)相互に共同実行の意思の連絡がなければ、共同正犯は成立しない。
(3)犯罪を共謀した者の一部が犯罪を実行し、謀議に参与したが現場に行かず、自宅に待機していた者についても共同正犯とされる。
(4)窃盗を共謀したのに、実際は強盗をしたような場合、そのことを知らずに外で見張りをしていた者も、その結果である強盗についての責任を負う。
(5)共謀して強盗を犯した場合に、その実行行為者の暴行によって被害者に傷害を与えたときは、共謀者全員が強盗致傷罪の責任を負う。

⇒二人以上で犯罪を行えば共犯(共同正犯、教唆犯、従犯)が問題となり、出題傾向を見ても、年度内の試験において、どこかの県で必ず出題される重要な項目である。また、一審事件(全地裁・簡裁)で有罪となった者のうち、共犯者のある者はそのうちの2割強を占める。共犯関係の内訳は、教唆犯・幇助犯として処罰された者は数パーセントで、共犯の圧倒的多数は共同正犯として処罰されている。

正解(4)

(4)誤り。
→見張りは、形式的に見れば、実行行為そのものではなく、単なる実行行為の補助的行為にすぎない
→しかし、実質的観点から考察すると実行行為と評価できる場合もある
→本問の共謀の内容は明らかでないが、住居侵入窃盗のような場合であれば、家の外での見張りは、窃盗の共謀の一内容と見ることができるから、窃盗罪の実行行為ということができる
→見張りをしていた者の主観は窃盗の意思しかないのに、発生した結果は強盗罪であるから、錯誤(食い違い)が問題となる
→本問の場合は、窃盗罪と強盗罪との異なった構成要件間に錯誤が生じている
判例・通説である法定的符合説によれば、両構成要件の重なり合う部分で故意を認めるから、本問の場合窃盗の部分で重なり、見張りをしていた者には、窃盗の限度で共同正犯が成立する
(1)正しい。
→刑法60条
(2)正しい。
→共同正犯の「共同」とは、相互の間に犯罪を実行することの意思の連絡があることである
→したがって、相互の意思の連絡がなければ共同正犯は成立しない
(3)正しい。
判例が採用している「共謀共同正犯」の考え方によれば、この場合も共同正犯が成立する
→すなわち、二人以上の者が一定の犯罪を実行することを共謀し、共謀者の一部がその犯罪を実行した場合には、実行行為に関与しなかった者を含め、共謀者全員に共同正犯が成立するとするものである
(5)正しい。
→強盗致傷罪は結果的加重犯であるが、判例は、基本となる犯罪と思い結果との間に条件関係が認められる限り、結果的加重犯の共同正犯を肯定する(最判昭22・11・5)

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事例から刑法を考える (法学教室Library)

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刑法総論の思考方法

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