9月7日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

行政法〈35〉
次は、都道府県職員が、公務中の交通事故により通行人をはね飛ばし重傷を与えた場合の賠償責任についての記述であるが、正しいのはどれか。
(1)公務中であるから、都道府県が責任を負い、事故を起こした者には一切責任がない。
(2)公務中といえども、事故そのものは不注意によるものであるから、事故を起こした者が全責任を負う。
(3)重傷を負った通行人は、都道府県のほか事故を起こした者に、直接損害賠償を請求することも可能であり、その場合、負担できない部分について都道府県が負担することになる。
(4)公務中であるから、国と都道府県が法律で定める割合によってそれぞれ責任を負う。
(5)都道府県が責任を負うが、事故を起こした者に故意又は重大な過失がある場合は、都道府県がその者に求償することができる。

⇒公務員の不法行為による国家賠償に関する問題は頻出である。各要件を覚えるだけでなく、事例形式(パトカーで警ら中の事例が多い)で出題されることも多いので、文言の内容も理解しておくべきである。

正解(5)

(5)正しい。
→公務員の不法行為による国家賠償の要件は、ア.公権力の行使、イ.職務関連性、ウ.故意・過失、エ.違法性、にまとめられる(国家賠償法1条1項)
→問題文の場合、これらの要件を満たすので、都道府県が責任を負う
→しかし、当該公務員に故意又は重大な過失がある場合は、国又は公共団体に求償権が認められている(同法1条2項)から、都道府県がその県職員に求償することができる
(1)誤り。
→公権力の行使に基づく損害の賠償責任は、国又は公共団体が負うものとされているので、職員が帰属する都道府県が責任を負う
→しかし、公務員に故意又は重大な過失がある場合は、国又は公共団体に求償権が認められるので、事故を起こした都道府県職員は一切責任がないとはいえない
(2)誤り。
→公権力の行使に基づく損害の賠償責任は、職員の帰属する都道府県が責任を負い、公務員個人は、被害者に対して賠償責任を負わない(最判昭30・4・19)
(3)誤り。
→(2)の解説参照
→被害者は公務員個人に対して、損害賠償の請求はできない
(4)誤り。
→公権力の行使に基づく損害賠償は、職員が帰属する都道府県が責任を負う
→国と都道府県が法律で定める割合によって責任を負うという規定は、国家賠償法に存在しない

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行政法

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はじめての行政法 第2版 (有斐閣アルマ)

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