9月6日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

憲法〈35〉
次は、内閣の総辞職についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)内閣は、存立の基礎を国会の信任に置くものであるから、特に、衆議院が内閣不信任を決議した場合については、内閣は直ちに総辞職しなければならない。
(2)内閣が総辞職した場合には、新内閣の成立まで前内閣が暫定的にその職務を行う。
(3)内閣は、国会が国民の意思を正当に代表していないと認める場合には、総辞職せずに、国民の意思を直接問うため、衆議院を解散し、総選挙に訴えることができる。
(4)内閣は、任期満了に伴う総選挙後、初めて国会が召集されたときは、総辞職しなければならない。
(5)内閣総理大臣が欠けたときは、内閣は総辞職しなければならない。

⇒内閣は、その存続が適当でないと考えるときは、いつでも総辞職できるが、憲法は、一定の事由が生じた場合には、必ず総辞職しなければならないと定める。内閣の総辞職に関する問題の出題頻度はそれほど高くはないが、総辞職が必要な場合が憲法に直接規定されているので、押さえておかなければならない。

正解(1)

(1)誤り。
日本国憲法は、議院内閣制を採用して、内閣が国会に対して政治的責任を負い、国会の信任を内閣存立の要件としている(66条、69条)から、問題文の前段は正しい
→しかし、衆議院が不信任の決議案を可決した場合は、内閣は、「10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職しなければならない」(69条)のであり、直ちに総辞職しなければならないわけではない
(2)正しい。
→総辞職の場合には「内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う」(71条)
→総辞職した内閣が直ちに職務を離れることは、行政事務の継続性の点で重大な支障を来すことになるからである
(3)正しい。
衆議院の解散について、憲法は、「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職しなければならない」(69条)と定めるのみで、その他の場合の解散可能性については直接規定していない
→通説は、内閣が実質的解散権を有するとした上で、69条は、内閣不信任決議がなされた場合の内閣がとるべき方法を定めたもので、解散をこの場合に限定する趣旨ではないとする
→したがって、69条以外の場合にも内閣は衆議院を解散するしうることになり、内閣はその裁量権を行使して、解散の時期と場合を決定できる
(4)正しい。
→「衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職しなければならない」(70条)
→この衆議院総選挙には、衆議院が解散された場合のほか、任期が満了したために行われる総選挙がある
→これは、内閣総理大臣を指名した衆議院の構成そのものが変わった以上、内閣はその親任の根拠を失い、その地位にとどまることができないからである
(5)正しい。
憲法70条は、内閣が総辞職しなければならない場合として、「内閣総理大臣が欠けたとき」を定めている
→内閣の一体性を保障することを目的とするものである

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