1月20日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑法〈3〉
次は、不能犯についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)呪詛(じゅそ)によって人を殺しうると信じて、いわゆる「丑の刻参り」をするのは、不能犯である。
(2)甲が殺害の目的で既に死んでいるAの体を突き刺した場合、一般の人から見ればAは既に死んでいると考えられるようであれば、不能犯である。
(3)不能犯は、結果が発生しなかった点では未遂犯に似ているが、意図した犯罪の実行行為がそもそも存在しない点で未遂犯とは本質的に異なり、刑が必ず減軽又は免除される。
(4)刑法典には、不能犯について何らの規定もなく、未遂罪との関係での法解釈にゆだねられているが、判例不能犯を認める立場に立っている。
(5)不能犯と未遂犯との区別について、判例の主流は通説と同様に具体的危険説、すなわち行為当時行為者が特に認識していた事情、及び一般人が認識し得たであろう事情を基礎とし、行為の時点に立って、一般人の立場から事後的かつ客観的に犯罪実現の危険性の有無を判断し、それが肯定されるときは未遂犯、否定されるときは不能犯とする。

⇒行為者としては犯罪を実現する意思で行為したが、その行為の性質上犯罪実現の危険性を欠き、実行の着手すら認められず、したがって未遂犯にもならない場合を不能犯という。
正解(3)
(3)誤り。
不能犯は構成要件該当性自体がないのであるから犯罪を構成せず、したがって、刑も存しないためその減軽・免除もあり得ない
(1)正しい。
→およそ結果発生が不可能であるから不能犯
(2)正しい。
判例・通説である具体的危険説からの帰結
→甲だけでなく一般人もAはまだ生きていると認められる事情があれば未遂罪
(4)正しい。
(5)正しい。
→具体的危険説は、行為の客観的危険性に着目しながらも、単に物理的観点から見るのではなく、社会一般人と行為者の立場からその危険性の判断を行う考え方

http://syounin.com/

事例から刑法を考える (法学教室Library)

事例から刑法を考える (法学教室Library)

刑法事例演習教材

刑法事例演習教材