3月17日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑法〈11〉
甲は、深夜人通りの少ない路上を通行中のA女を強姦しようとして空き地に引きずり込んだが、A女が抵抗したためその目的を果たさなかったが、その際の暴行によりA女に傷害を負わせた。その後、A女が所持していたバッグを奪ったが、その際にもA女が抵抗したため、更に暴行を加えてA女に傷害を負わせた。甲の刑事責任として正しいのはどれか。
(1)強姦未遂罪、傷害罪、強盗致傷罪
(2)強姦未遂罪、窃盗罪、傷害罪
(3)強姦致傷罪、強盗致傷罪
(4)強姦未遂罪、傷害罪、強盗罪
(5)強盗強姦罪、傷害罪

⇒本問のような場合は、甲の行為を、(1)A女を強姦しようとした行為、(2)A女のバッグを奪った行為、に分けて検討すると、混乱することなく結論を導くことができる。

正解(3)
(1)A女を強姦しようとした行為について
強姦罪における暴行は、相手方の反抗を抑圧する程度までは必要なく、その反抗を著しく困難にする程度のもので足りる
→甲がA女を空地に引きずり込み暴行を加えることは、相手方の反抗を著しく困難にする行為であるから、強姦の故意でこのような行為をした以上、強姦罪の実行の着手が認められる
→A女の抵抗で、甲の強姦は未遂に終わったが、その際の暴行により傷害を負わせているので、強姦致傷罪が成立するのか問題となる
強姦罪の結果的加重犯である強姦致傷罪は、その基本となる犯罪に強姦未遂罪を含んでおり、強姦が未遂に終わっても成立する
→傷害の結果発生は、姦淫行為自体による場合だけでなく、その手段である暴行による場合でもよい
→以上から、甲には強姦致傷罪が成立し、(1)(2)(4)は誤りとなる
(2)A女のバッグを奪った行為について
→強盗罪における暴行は、強取の手段であるから、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要する
→強取とは、暴行・脅迫により、被害者の意思に反して財物を自己又は第三者の占有に移すことをいう
→甲がAに加えた暴行は、傷害を負わせる程度であるから、被害者の反抗を抑圧するに足りるものであり、その状況下にバッグを奪っているから、強取に当たり、甲は強盗犯人である
→強盗犯人が強盗の機会に傷害を負わせれば強盗致傷罪が成立するから、甲には強盗致傷罪が成立し、強盗犯人が強姦を行った場合に成立する強盗強姦罪には当たらない
→以上から、(5)は誤りとなり、(3)が正解となる

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事例から刑法を考える (法学教室Library)

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刑法判例百選1総論(第6版) 別冊ジュリスト189

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