3月18日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑訴法〈11〉
次は、告訴についての記述であるが、正しいのはどれか。
(1)妻が強姦された場合、その夫には告訴権はない。
(2)告訴は、告訴権者が捜査機関に対し、犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示であることから、その犯罪事実については、日時、場所、犯罪の態様等の詳細まで明確になっている必要がある。
(3)刑事訴訟法では、「告訴は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にしなければならない」と規定しているから、電話による告訴も有効である。
(4)親告罪の告訴期間は、原則として犯人を知った日から6か月以内であるので、強姦の未成年者の被害者が、犯人を知っていたにもかかわらず、恥ずかしさのあまり、告訴の意思表示を示さず6か月を経過したときは、告訴することはできない。
(5)親告罪について、告訴権者が告訴した後、共犯者の一人について告訴の取消しをした場合、他の共犯者はそれぞれ独立体であるから、取消しの効力は及ばない。

⇒捜査の端緒の分野では、告訴に関する問題が最も多い。出題されている範囲も万遍ないので、意義・要件等十分に整理しておくべきである。

正解(1)
(1)正しい。
→告訴権者は、原則として被害者(刑訴法230条)であるが、この被害者とは直接の被害者をいうから、間接的な被害者である夫は告訴できない
(2)誤り。
→告訴が有効であるためには、犯罪事実を示さなければならないが、この犯罪事実は、他の犯罪と区別できる程度に特定されていればよい
(3)誤り。
→口頭による告訴の場合は、調書の作成が予定されている(刑訴法241条2項)から、捜査機関の面前における陳述が必要であり、電話による告訴は無効とされている(東京高判昭35・2・11)
(4)誤り。
→平成12年の改正により、強制わいせつ、強姦、営利拐取等の告訴については、告訴期間の制限が撤廃された(刑訴法235条1項ただし書)
→未成年者でも、告訴の意味・効果を理解できる能力さえあれば有効な告訴をなし得る
判例は、告訴当時13歳11か月の告訴の訴訟能力を認めている(最決昭32・9・26)
(5)誤り。
親告罪について共犯の一人又は数人に対してした告訴又は告訴の取消は、他の共犯者に対しても、その効力を生ずる(刑訴法238条1項)ー告訴の主観的不可分の原則

刑事訴訟法 第3版 (有斐閣アルマSpecialized)

刑事訴訟法 第3版 (有斐閣アルマSpecialized)

刑事訴訟法判例百選 (別冊ジュリスト (No.174))

刑事訴訟法判例百選 (別冊ジュリスト (No.174))