3月19日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

論文問題 行政法〈3〉
A巡査部長は、交通違反取締りのため一斉検問を実施中、同所にさしかかった車両(1名乗車)を手信号により停止させた。A巡査部長が運転者の甲に対し運転免許証の呈示を求めたところ、甲がいきなり車を発進させ逃走しようとしたため、A巡査部長は、これを走って追跡し同所から約30メートル先の信号交差点で停車した同車に追いついた。A巡査部長は、解放状態にあった同車の運転席窓から手を入れ、阻止しようとした甲の手を払いのけ、エンジンのスイッチを切ってエンジンキーを抜き取った。
A巡査部長の行った職権行使の適否について述べなさい。

答案構成例
1.自動車検問の意義
2.自動車検問の根拠
3.職務質問の要件
4.停止の手段と限界
5.事例の検討

1.自動車検問の意義
→自動車検問とは、犯罪の予防、検挙等のため、警察官が走行中の車両を停止させて、自動車の見分及び運転者・同乗者に対する質問を行うこと
2.自動車検問の根拠
(1)警職法2条1項
→当該車両について具体的異常を外部から現認できる場合は、警職法2条1項を根拠に自動車を停止させることができる
(2)警察法2条
→具体的異常を外部から現認できない自動車検問であっても、警察法2条を根拠に、警察の責務を達成するための任意活動として行うことができる
→この場合は、相手方の任意による協力を得て行うのが原則であり、職務質問で認められるような実力を行使することはできない
→ただし、具体的状況から不審な点が認められれば、職務質問の要件を満たすことになり、職務質問としての実力行使が可能となる
3.職務質問の要件
→警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して、何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者に対し、停止させて質問することができる(警職法2条1項)
4.停止の手段と限界
→停止は、相手方の協力を得て行う任意手段として認められたもの
→停止の要求に応じない場合には、これに応じるよう説得できる
→説得に応じない者に対しては、強制にわたらない範囲で、必要に応じ、一定限度の実力行使も認められる
5.事例の検討
→一斉検問による甲の車両の停止は、警察法2条に基づく行為であり適法である
→運転免許証の呈示要求に対し、甲はいきなり車を発進させ逃走しようとしているから、不審者に当たり、停止させて職務質問することができる
→甲は、停止の要求に応じなかったのであり、エンジンのスイッチを切ってエンジンキーを抜き取った行為は、停止の手段として必要に応じた実力行使である
→以上から、A巡査部長が行った職権行使は適法である

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行政法

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はじめての行政法 (有斐閣アルマ)

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