3月24日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑法〈12〉
次は、従犯についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)幇助とは、それ自体犯罪の実行行為でない行為によって正犯の行為を助け、その実現を容易ならしめることをいう。また、幇助行為は、正犯の実行に必要欠くべからざる行為であることを要しない。
(2)幇助と教唆との区別は、前者は既に犯罪を決意している者に対して実行を容易ならしめるものであるのに対し、後者はまだ犯罪を決意していない者に対してその決意を生ぜしめる行為である。
(3)従犯が成立するためには、被幇助者が犯罪の実行に出たこと、すなわち、犯罪構成要件に該当する行為をすれば足りる。
(4)判例は、一般に「見張り」を共同正犯であるとするが、賭博の見張りは従犯とする。
(5)従犯が成立するためには、幇助者において正犯の犯罪行為を認識し、これを容易にして幇助することを要するが、被幇助者において幇助を受けていることの認識は必要でない。

⇒行為者が二人以上登場すれば「共犯」の問題となるのであるから、共犯についての知識・理解は重要である。共同正犯をはじめとする共犯のそれぞれについて、その意義・要件を確実に覚えるとともに、事例問題を通じて、その知識を使えるようにすることが必要である。

正解(3)
(3)誤り。
→従犯は「他人の犯罪」に加功するものであるが、この「犯罪」とは何かについて、通説は、正犯の行為は、構成要件に該当し、かつ違法であること要する(制限従属性説)とする
判例は、正犯の行為は、構成要件に該当し、かつ違法・有責であることを要するとする(極端従属性説)
→したがって、いずれの立場によっても、被幇助者が犯罪構成要件に該当する行為だけでは足りない
(1)正しい。
→正犯者の実行にとって不可欠な行為であることを必要としない(大判大2・7・9)
(2)正しい。
→したがって、既に犯罪を決意している者に対してその決意を強めるのは、教唆ではなく幇助である
(4)正しい。
→見張りについて、判例は、賭博罪の見張り行為を従犯としている(大判大7・6・17)が、殺人罪(大判明44・12・21)、住居侵入罪(大判大5・11・17)、窃盗罪・強盗罪(最判昭23・3・16)の見張りは、いずれも、共同正犯としている。
(5)正しい。
→幇助者と被幇助者との間には、相互的な意思の連絡は不要とすするのが判例・通説である
→これを片面的従犯という

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刑法判例百選1総論(第6版) 別冊ジュリスト189

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判例刑法各論

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