3月31日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ
こんにちは。水野です。
刑法〈13〉
次は、正当防衛、緊急避難についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)正当防衛の防衛者は、防衛の結果として発生した事態に対し、民事的な損害賠償義務を負わないが、緊急避難者は、避難行為によって第三者に転嫁された損害について、損害賠償義務を負う場合がある。
(2)正当防衛は、不正の侵害に対して侵害者に向けられる反撃であるが、緊急避難は、危難を避ける者から第三者に向けられる侵害である。
(3)正当防衛の「急迫」とは、法益侵害の危険が目前に差し迫ったこと、すなわち法益侵害の緊急性を意味し、緊急避難にいう「現在」と同じ意味である。
(4)正当防衛・緊急避難ともに「やむを得ないで行った」ものであることを要し、その行為がその場合における唯一の方法であって、他にとるべき方法がなかったことを要する。
(5)正当防衛と緊急避難は、いずれも緊急状態における行為の違法性を阻却する点で共通の性格を有する。
⇒正当防衛と緊急避難は頻出問題である。それぞれの要件を正確に覚えておくとともに、両者の異同を整理しておく必要がある。さらに、過剰防衛、誤想防衛についても意義・要件を整理しておくことが望ましい。
正解(4)
(4)誤り。
→正当防衛(刑法36条)・緊急避難(37条)ともに、「やむを得ずにした行為は」という文言を用いている
→言葉本来の意味は、他にとるべき方法がないということであり、緊急避難についてはこのように解されている
→しかし、正当防衛についても緊急避難と同様に解すると、正が不正に譲歩しなければならないことになり、他にとるべき方法がないという言葉本来の意味で理解すべきでないとするのが一般である
→判例も、急迫不正の侵害に対する反撃行為が、自己又は他人の権利を防衛する手段として必要であり、かつ、相当性を有する行為をいう(最判昭44・12・4)とする
(1)正しい。
→民法720条
(2)正しい。
→正当防衛は不正の侵害に対する反撃として行われるもので、正対不正の関係を基礎とする
→緊急避難は危難の原因とは関係ない第三者の犠牲において避難行為がなされるもので、正対正の関係を基礎とする
(3)正しい。
→「急迫」と「現在」とは、いずれも緊急状態をあらわす概念として、ほぼ同じ意味に理解されている
(5)正しい。
→いずれも緊急行為として違法性阻却事由であり、共通の性格を有する
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