4月5日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑法〈14〉
次は、未遂犯についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)未遂犯とは、犯罪構成要件に該当する行為であるが、結果が未だ発生していないものをいい、刑法は、重要な犯罪については未遂罪を罰することにしている。
(2)単に、構成要件に定められた結果発生を目的として何らかの行為をしたというだけでは、まだ実行の着手があったとはいえないが、殺人の目的で凶器となるものを買い入れたり、放火による保険金詐欺の目的で放火したときは、未遂犯となる。
(3)犯罪を遂げなかった態様による未遂罪の区別には、着手未遂と実行未遂とがあるが、着手未遂とは、行為そのものが中途で未完成に終わった場合をいう。
(4)犯罪を遂げなかった原因による未遂犯の区別には、障害未遂と中止犯とがあるが、障害未遂は、その刑を減軽することができる。
(5)窃盗犯人が、警察官の来るのを見て犯罪の発覚をおそれて中止した場合は、中止未遂ではなく障害未遂である。

⇒未遂犯については、未遂犯の種類をまず押さえておくとこと。特に中止未遂については、その要件である「任意性」があるか否かを、事例の中で判断できるようにしておく必要がある。また、実行の着手についても、犯罪構成要件の実現に至る現実的危険性を含む行為を開始することというその意義を、具体的事例の中で理解しておく必要がある。

正解(2)
(2)誤り。
→実行の着手とは、犯罪構成要件の実現に至る現実的危険性を含む行為を開始することであるから、問題文前段は正しい
→殺人の目的で凶器を買っても単なる予備にすぎない
→詐欺罪の実行の着手は欺罔行為を開始することであるから、保険金を得るため放火しただけでは、詐欺罪の実行の着手がなく、未遂犯とならない
(1)正しい。
→刑法44条
(3)正しい。
→未遂犯とは、犯罪の実行に着手したが、犯罪の完成に至らないことをいう
→犯罪の完成に至らないとは、行為者の着手した実行行為が終了しなかった場合(着手未遂)と、実行行為は終了したが予期した構成要件的結果を生ずるに至らなかった場合(実行未遂)とがある
(4)正しい。
→未遂犯は、広い意味では、中止未遂、すなわち自己の意思により犯罪を中止した場合も含むが、狭い意味ではこれを除いた障害未遂を指す
→障害未遂は任意的減軽である(中止未遂は必要的減免)
(5)正しい。
→中止犯の成立には、自己の意思により犯罪を中止したこと(任意性)が必要である
→この任意性があるか否かについての基準について、判例の多くは、通常の平均人ならば、そのような場合に犯行を中止しないと考えられるにもかかわらず行為者が中止た場合に任意性があるとする
→警察官が来るのを見れば、一般人は犯行を中止するであろうから、問題文の場合、任意性があるとはいえず、中止未遂ではなく障害未遂である

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刑法判例百選1総論(第6版) 別冊ジュリスト189

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ケースブック刑法 第3版(弘文堂ケースブックシリーズ)

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