4月23日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

論文問題 刑法〈4〉
Aは、甲市役所の会計調度課長として、事務機器の購入事務を担当していた。甲市が乙商店から事務機器を購入するに当たり、Aは乙商店の経営者Bに対して、「消費税の5パーセントをリベートとして自分にもらいたい」と要求した。Bは、これを了承して、1年間に数回にわたり、甲市に4千万円相当の事務機器を納入し、リベートとして200万円をAに渡していたことが判明した。
この場合、Aの刑事責任について述べなさい。

答案構成例
1.単純収賄
(1)意義
(2)主体
(3)客体
(4)行為
(5)故意
2.罪数関係
3.事例の検討
4.結論

1.単純収賄
(1)意義
→単純収賄罪とは、公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、またはその要求もしくは約束をすることによって成立する犯罪である
(2)主体
→公務員である(身分犯)
→公務員は、刑法7条のいう「法令により公務に従事する職員」および「みなし公務員」である
(3)客体
→賄賂罪の客体は賄賂である
ア.賄賂の意義
→賄賂とは、公務員の職務に関連する不正の報酬としての一切の利益をいう
イ.職務
→職務とは、公務員がその地位に伴い公務として取り扱うべき一切の執務をいう
→「職務に関し」とは、職務権限に属する行為のほか、職務と密接な関係がある行為に関する場合をも含む
ウ.対価関係
→賄賂は、職務行為または職務と密接に関連する行為の対価として提供されたものでなければならない
エ.目的物
→賄賂の目的物は、金品その他の財産的利益に限らず、およそ人の需要または欲望を満たす利益であれば、いかなるものであるとを問わない
(4)行為
→単純収賄罪の行為は、賄賂を収受し、要求し、または約束することである
ア.収受
→「収受」とは、賄賂を受け取ることをいう
イ.要求
→「要求」とは、賄賂の供与を要求することをいい、相手方がこれに応じなくても既遂となる
ウ.約束
→「約束」とは、贈賄者と収賄者との間で将来賄賂を収受すべきことについて合意することをいう
(5)故意
→行為の客体の賄賂性、すなわち、その職務に関する不正の報酬としての利益であることを認識すること(意味の認識)である
2.罪数関係
→賄賂を要求して約束し、または要求ー約束ー収受した場合は、単に一個の収賄罪(包括一罪)が成立するにすぎない
3.事例の検討
→Aは甲市役所の会計調度課長であるから本罪の主体となる
→本問のリベートは、Aが担当している事務機器の購入事務に関する金銭であり、職務に関する不正の報酬といえる
→AはBに対しリベートを要求し(したがって賄賂性の認識があるといえる)、Bはこれを了承し、さらにリベートとして200万円を受け取っているので、Aには賄賂要求罪、賄賂約束罪、賄賂収受罪が成立する
→Aは、同一人であるBに対し、賄賂を要求し、約束し、さらに、収受しているので、その行為全体について一個の収賄罪(包括一罪)が認められる
4.結論
→Aには、単純収賄罪(刑法197条1項)が成立する

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刑法判例百選1総論(第6版) 別冊ジュリスト189

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最新重要判例250 刑法 第7版

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