6月7日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑法〈23〉
Aは、就職するに際し、身分を隠すため他人の住所、氏名を使用し、かつ、押印した履歴書を作成し、甲会社に提出して就職した。この場合のAの罪責として、正しいのはどれか。
(1)有印公文書偽造罪、同行使罪
(2)虚偽公文書作成罪、同行使罪
(3)虚偽私文書作成罪、同行使罪
(4)有印私文書偽造罪、同行使罪
(5)公正証書原本不実記載罪

⇒文書偽造罪は、出題頻度からみるとBランクであるが、文書の観念、公文書・私文書の区別、偽造・変造の区別、行使の意義は理解し覚えておく必要がある。

正解(4)
(4)正しい。
〈偽造について〉
→履歴書は、実生活に交渉を有する事項を証明する文書であり、私文書といえる
→偽造とは、作成権限を有しない者が、他人の氏名をほしいままに使用して文書を作成することをいう
→Aには、他人の名義の履歴書を作成する権限はないので、Aの行為は偽造といえる
→この場合、Aは押印しているので、他人の印章・署名を使用して私文書を偽造したことになり、有印私文書偽造罪(刑法159条1項)が成立する
〈行使について〉
→行使とは、偽造文書を真正文書もしくは内容の真実な文書として他人に認識させ、または認識しうる状態に置くことをいう
→行使は、偽造文書の行使によって公衆の信用を害するおそれを生じさせるに足りる行為があればよく、行使の方法に各別の制限はない
→したがって、就職先の会社に提出するのも行使に当たり、Aには有印偽造私文書行使罪(161条1項)が成立する
→以上から、(1)〜(3)、(5)は誤り

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刑法事例演習教材

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事例から刑法を考える (法学教室Library)

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