6月25日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

論文問題 刑訴法〈6〉

A警部補は、暴力団事務所へ覚せい剤取締法違反容疑事件の捜索差押許可状を持って、捜査員とともに赴いたところ、組長の甲は不在であったが、内縁の妻乙が在宅していた。
次の小問1から4について、A警部補のとるべき措置を法的観点から述べなさい。
問1
乙が「主人がいないので捜索を待ってほしい。」と主張し、立会要請を拒否した。
問2
乙に令状を示して捜索を実施しようとしたところ、乙は、「令状をコピーさせてほしい。」と要求した。
問3
捜索を実施中に、これを察知した同組の顧問弁護士が捜索の立会いを要求してきた。
問4
事務所内の金庫が施錠されていたので、乙に鍵を要求したところ、「主人が持っているので、私は知らない。」と申し立てた。

問1について
(1)責任者の立会い
→人の住居等で捜索・差押えを実施するときは、住居主やこれに代わる者等の立会が必要である
→これらの者がいないときは、隣人又は地方公共団体の職員の立会いが必要である(刑訴法222条1項、114条2項)
(2)立会を拒否した場合の措置
→立会いにおける「立ち会わせることができない」とは、責任者が不在の場合のほか、立会いを拒否した場合を含む
→内縁の妻乙が拒否しているので、隣人又は地方公共団体の職員を立ち会わせて、捜索・差押えの執行をすべきである
問2について
(1)捜索差押許可状の提示
→捜索差押許可状により捜索・差押えを実施する場合、令状を処分を受ける者に示さなければならない(222条1項、110条)
(2)捜索差押許可状のコピーの要求
→令状の提示により法の目的を達することができ、しかも法はそれ以上の行為を要求していない
→乙の要求に対しては、これに応じる必要はなく、令状を示して捜索・差押えを実施することができる
問3について
(1)弁護人の立会権
刑事訴訟法は、弁護人の立会権を規定した113条を、捜査機関が行う捜索・差押えに準用していない
→したがって、弁護人は捜索・差押えに立ち会う権利を有しない
(2)立会い要求の場合の措置
→顧問弁護士の立会いの要求に応じる必要はなく、これを拒否することができる
問4について
(1)捜索・差押えに必要な処分
→捜査機関は、捜索・差押えを実施する場合に、錠を外し、封を開き、その他必要な処分をすることができる(222条1項、111条)
→必要な処分には、物の破壊等も含まれるが、被処分者に最も損害の少ない方法によるべきであるとされる
(2)施錠された金庫の場合
→かぎの保管者が不在の場合、当人が現れるまで一時捜索を中止し、かぎを入手した上で捜索・差押えを再開して金庫を開ける方法が妥当である
→かぎの保管者の速やかな帰来が期待できないような場合、錠前屋を呼び、合いかぎで開けさせるか、錠を破壊することも許される
→金庫を差押目的物在中の容器とみてこれを差し押さえて持ち帰るか、運搬が不便なときは看守者をおく方法も可能である

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刑事訴訟法 第3版 (有斐閣アルマSpecialized)

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刑事訴訟法判例百選 (別冊ジュリスト (No.174))

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