6月28日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑法〈26〉
甲は、マンション2階のA方居室に侵入して現金などを窃取した後、逃走するためA方居室前の廊下に出て数歩歩いたところ、折しも帰宅したAと顔を合わせた。そこで、甲は、もしAが盗難被害に気付いて騒ぎ出してはまずいと考え、すれ違いざまにいきなりAの顔面を数回殴打した。Aは、ケガはしなかったが、恐怖のため廊下にしゃがみ込んだため、甲はそのすきに逃走した。この際、Aは、甲が窃盗犯人であることを全く認識していなかった。
この場合、甲の罪責として正しいのは次のうちどれか(住居侵入の点については別論とする)。
(1)事後強盗罪
(2)強盗罪
(3)窃盗罪・暴行罪
(4)事後強盗罪の未遂
(5)強盗罪の未遂

正解(1)
(1)正しい。
→窃盗犯人甲が、窃盗の現場に近接するA方居室前の廊下で、Aに暴行を加えているので、事後強盗罪の成否が問題となる
→事後強盗罪は、ア.「窃盗」が、イ.「財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するため」に(目的犯)、ウ.「暴行又は脅迫」をしたことによって成立する
→甲はA方に侵入して現金などを窃取しているので、本罪の主体となる
→本罪の行為である「暴行又は脅迫」は、窃盗の機会に加えられたものであることを要する
→窃盗の機会は、時間的、場所的に、窃盗行為に接着した範囲内であるとされている
→本問では、窃盗の現場であるA方居室前の廊下を出て数歩歩いたところで暴行を加えているので、窃盗の機会ということができる
→本罪の暴行は、本来の強盗罪と同じく反抗を抑圧する程度のものであることが必要である
→甲は顔面を数階殴打しているので、反抗を抑圧する程度ということができる
→本罪は目的犯であり、上記イ所定の目的をもって暴行・脅迫を加えることが必要である
→甲は、Aが盗難被害に気付いて騒ぎ出してはまずいと考えて暴行を加えているので、イ所定の目的があるといえる
→以上から、甲には事後強盗罪が成立する
→なお、Aは、甲が窃盗犯人であることを認識していなかったとあるが、この点は本罪の成否を左右するものではない
→(2)〜(5)は誤り

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新・論点講義シリーズ2 刑法各論 (新 論点講義シリーズ)

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事例から刑法を考える (法学教室Library)

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