8月2日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ「

こんにちは。水野です。

刑法〈31〉
次は、強盗罪についての記述であるが、正しいのはどれか。
(1)強盗罪における暴行・脅迫は、相手方の反抗を抑圧する程度のものであれば足り、かつ、それによって相手方が現実に反抗を抑圧されたことが必要である。
(2)強盗罪における暴行・脅迫の相手方は、財物の所有者又は占有者でなければならず、意思能力を有する者であればよい。
(3)強盗の故意で財物を奪取し、次いで被害者に暴行・脅迫を加えてその財物を確保した場合には、強盗罪が成立し、事後強盗罪は成立しない。
(4)財産上の利益の取得について、2項詐欺罪・2項恐喝罪におけると同様に、被害者の処分行為を必要とするのが判例・通説である。
(5)婦女を強姦した後、相手方の畏怖状態に乗じて財物を強取した場合は、強盗強姦罪が成立する。

⇒強盗罪については、236条の強盗罪だけでなく、事後強盗罪、強盗致傷罪、強盗強姦罪などの知識が、1問で問われることが多いので、幅広く整理しておく必要がある。

正解(3)
→「強取」するとは、暴行・脅迫を用い、相手方の反抗を抑圧して、その意思によらずに、財物を自己又は第三者の占有に移すことをいう
→ただ、被害者の反抗が抑圧された状態で財物の占有が奪われたとみられる限り、現実の奪取行為は、暴行・脅迫の前になされても差し支えない
→したがって、問題文の場合、強盗罪が成立するのであり、事後強盗罪ではない
(1)誤り。
→暴行・脅迫は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであれば足り、現にそれによって相手方が反抗を抑圧されたことは必要でない(最判昭23・11・18)
(2)誤り。
→暴行・脅迫の相手方は、財物の強取について障害となる者であれば足り、必ずしも財物の所有者又は占有者であることを要せず(大判大1・9・6)、また、十分な意思能力者である必要もない(最判昭22・11・26)
(4)誤り。
→財産上の利益の取得が、被害者の財産的処分行為を基づくものであることを要するかについては、積極説と消極説が対立している
判例は、1項強盗罪・2項強盗罪ともに処分行為は不要であるとしている(最判昭32・9・13)
→抵抗を抑圧された被害者が債務免除等の意思表示に出ることなどは、事実上不可能に近いからである
(5)誤り。
→強盗強姦罪(241条前段)の主体は「強盗」、すなわち強盗犯人(既遂、未遂を問わない)である
→強姦犯人が強盗の意思を生じて財物を奪取した場合は、強姦罪(177条)と強盗罪(236条)との併合罪(45条)である

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事例から刑法を考える (法学教室Library)

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図解でわかる刑法 (入門の法律)

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