8月9日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

※すでに「昇任試験.com」トップページで告知済みですが、8月10日(火)〜8月14日(土)を夏期休業とさせていただきますので、「今日の模擬試験」の配信もその期間休みます。ご了承お願い致します。

刑法〈32〉
次は、賄賂罪の職務についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)賄賂罪における職務の範囲について、判例は、法令に職務権限についての明文の規定がなければ職務の存在を認めないとしている。
(2)賄賂罪における職務は、独立した指導監督権や最終決裁権・決定権を持つものであることを要せず、上司の指揮監督の下にその命を受けて取り扱う事務もこれに当たる。
(3)賄賂罪における職務というためには、当該事務に関して、法令上一般的な職務権限があれば足り、現実にその事務を担当している必要はない。
(4)賄賂罪における職務行為は、正当なものであると不正なものであるとを問わず、正当な職務行為に関しても収賄罪が成立し、また、事実上手心を加える余地のない場合も職務となり得る。
(5)賄賂罪の職務行為は、作為であると不作為であるとを問わないが、職務は通常、積極的になすべき事務として規定されていることが多く、この場合の不作為は、相当な行為をなさなかったものとして、加重収賄罪が成立する。

⇒「国家の作用を害する罪」の範囲からの出題で最も多いのは、賄賂罪と公務執行妨害罪である。賄賂罪に関しては、各収賄罪の定義を覚えるとともに、これら各犯罪に共通する賄賂の意義、すなわち、職務との関連性、対価関係、賄賂の目的物、賄賂性の限界、について整理しておく必要がある。

正解(1)

(1)誤り。
→職務行為とは、公務員が、その地位に伴う本来の任務として取り扱うべき一切の執務を意味する。その範囲は、法令(訓令、通達、内規などを含む)によって定められることが少なくないが、必ずしも、法令に直接の規定があることを要しない(大判大5・1・28)
(2)正しい。
→職務行為は、それについて独立の決裁権を有する場合に限らず、上司の指揮監督のもとに、その命をうけて事務を取り扱うにすぎない従属的ないし補佐的職務でもよい(最判昭28・10・27)
(3)正しい。
→職務といえるためには、法令上当該公務員の抽象的な職務権限に属するものであれば足り、現に具体的に担当している事務であることを要しない(最判昭37・5・29)
→すなわち、公務所における内部的な事務分配のいかんにかかわらないし(最判昭27・4・1)、将来にいたって、初めて行いうる事務であってもよいし(最決昭36・2・9)、また、過去に担当していたことがあるが、現在は担当していない事務であっても差支えない(大判明42・12・17)
(4)正しい。
→賄賂罪は、「職務の公正に対する社会の信頼を確保」するために規定されている(大判昭6・8・6)
→とすると、職務は、正当なものであると否とを問わず、また、手心を加える余地のない職務であっても、その職務に関して賄賂を収受すれば、職務の公正に対する社会の信頼は失われることになる
(5)正しい。
→職務行為は、例えば、巡査が故意に捜査を中止する(大判大8・3・31)など、不作為でもよい
→加重収賄罪(刑法197条の3第1項)にいう「不正な行為をし、又は相当な行為をしなかった」とは、その職務に違反する作為・不作為の一切を指す

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たのしい刑法 第2版

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刑法事例演習教材

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