8月16日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑訴法〈32〉
次は、告訴についての記述であるが、正しいのはどれか。
(1)13歳の女子が、強姦の被害を受けたと告訴してきたが、未成年者であったため、告訴を受理しなかった。
(2)14歳の娘が強姦されたが、娘は恥ずかしさで告訴する意思もなく、母親も本人の将来を考えて告訴する意思はなかった。しかし、父親が告訴してきたのでこれを受理した。
(3)15歳の娘が知っている男に強姦され1年が経過した後、母親がこれを知って6か月後に告訴してきたので、受理しなかった。
(4)結婚している16歳の娘が強姦されたと父親が告訴してきたので、これを受理した。
(5)妻が強姦されたと被害者の夫が告訴してきたので、これを受理した。

⇒「捜査の端緒」の分野では、告訴に関する出題が最も多い。問われる内容も、階級の区別なく、かなり細かい。ていねいに整理しておく必要がある。

正解(2)

(2)正しい。
→刑訴法上、告訴する権利を与えられている者を告訴権者という
→告訴権者は、原則として被害者であるが、法定代理人など被害者以外の者にも告訴権が与えられている(刑訴法230条〜234条)
→ここにいう「法定代理人」とは、未成年者の親権者、すなわち父母(民法818条、819条)、及び未成年者・禁治産者等の後見人(民法839条、840条、841条)をいう
法定代理人は独立して告訴することができる(刑訴法231条1項)が、「独立して」とは、被害者本人の明示・黙示の意思に拘束されないことを意味する
→問題文の場合、親権者が父・母二人いるが、親権者が二人あるときでも、各自が単独で告訴できる(最判昭34・2・6)から、父親の意思のみによる告訴も有効である
(1)誤り。
→刑法上の未成年者である14歳未満の者(刑法41条)でも、意思能力を欠くと認められる幼年者を除き、告訴の意味・効果を理解できる能力さえあれば、有効な告訴ができる(最判昭32・9・26)
(3)誤り。
親告罪の告訴は、犯人を知った日から6か月経過したときは、これをすることができない(刑訴法235条1項本文)
→ただし、平成12年の刑事訴訟法の改正により、強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ・準強姦、営利拐取等の罪、又はこれらの罪の未遂犯につき行う告訴について、告訴期間の制限が撤廃された(235条1項ただし書)
(4)誤り。
→未成年者が法律上の婚姻をした場合、成年に達したものとみなされ(民法753条)、父母の親権は消滅する
→したがって、父母は法定代理人として告訴できなくなる
(5)誤り。
→告訴権者は被害者であるが、「被害者」とは、犯罪によって直接に害を被った者をいい、その犯罪によって間接的に不利益を被った者は、ここにいう被害者ではない
→妻が強姦された場合、被害者は妻であって、その夫は被害者ではない

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図解でわかる刑事訴訟法 (入門の法律)

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刑事訴訟法判例百選 (別冊ジュリスト (No.174))

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