8月20日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

論文問題 刑訴法〈8〉
緊急逮捕と逮捕状の請求〕
傷害事件の被疑者「甲」を緊急逮捕し、逮捕状請求の手続をとっていたところ、「甲によって傷害を負わされた被疑者乙が、収容先の病院で死亡した。」との連絡を受けた。
緊急逮捕の要件を説明し、この場合の逮捕状請求手続について述べよ。【警部補試験】

答案構成例
1.緊急逮捕の要件
2.緊急逮捕状の法的性質
3.事例の検討

1.緊急逮捕の要件(刑訴法210条1項)
(1)重罪性
緊急逮捕できる犯罪は、死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪(未遂、教唆・ほう助を含む)に限られる
→これは処断刑ではなく法定刑を指す
(2)嫌疑の充分性
→(1)の罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由が存在しなければならない
→「充分な理由」とは、通常逮捕に要求される「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」よりも嫌疑の程度の一層強いものでなければならず、それは、さらに捜査機関の主観的な理由では足りず、客観的資料に基づいた合理的な理由でなければならない
→この「充分な理由」は、逮捕時に存在しなければならない
(3)緊急性
→急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができない場合でなければならない
→すなわち、通常逮捕状の請求及びその発付を待っていたのでは、逮捕の実行が著しく困難化すると認められる場合である
(4)逮捕の必要性
緊急逮捕においては、通常逮捕と異なり、その必要性を要求する明文の規定はないが、通常逮捕と同様の必要性が要求されると解されている
→すなわち、逃走のおそれ又は罪証隠滅のおそれが存在しなければならない
2.緊急逮捕状の法的性質
→被疑者を緊急逮捕した場合には、直ちに裁判官の令状を求める手続をしなければならない(210条1項後段)
→この緊急逮捕状の法的性質は、その逮捕が適法・妥当なものであったことを追認することにある
→これを逮捕者の側からみれば、緊急逮捕した被疑者について逮捕状を請求することは、逮捕行為に対して裁判官の追認を求める行為にほかならない
→それは、逮捕の理由となった事実につき、逮捕当時に存在した資料によって逮捕の要件を疎明し追認を求めるものである
→したがって、逮捕後に犯罪事実に変更があっても、逮捕時に認定した犯罪事実によって逮捕状の請求をすべきである
3.事例の検討
→逮捕後に乙が死亡したとしても、緊急逮捕状請求の疎明資料及び被疑事実については、逮捕時を基準とすべきであるから、緊急逮捕状の請求は、「傷害罪」の被疑事実で請求すべきである
→甲の行為と乙の死亡との間に因果関係が認められれば、送致罪名を「傷害致死罪」とすれば足りる

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