9月2日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑訴法〈35〉
次は、逮捕状の執行についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)逮捕状により被疑者を逮捕する場合は、被疑者に逮捕状を呈示しなければならないが、手渡すことまでは要求されていない。
(2)いわゆる逮捕状の緊急執行の場合に、被疑者に対して告げる被疑事実の要旨は、「理由なく逮捕するものではない」ことを理解できる程度に要点を告知すれば足りる。
(3)被疑者を逮捕し、手錠を施して引致場所へ向かう途中被疑者が逃走した。この場合、引致場所へ引致しておらず、逮捕行為が完了していないので、逮捕状の効力は失われていない。
(4)被疑者を逮捕すべく逮捕状を示したところ、被疑者は逃走し、逮捕できなかった。この場合、逮捕行為が完了していないので、逮捕状の効力は失われていない。
(5)逮捕状の緊急執行を行った場合には、できる限り速やかに逮捕状を被疑者に示さなければならない。

⇒「通常逮捕状の執行」については、逮捕状の効力、逮捕の方法、逮捕状の緊急執行に関する出題が中心である。項目について細かいところまで問う出題が多いが、各項目を網羅的に問う出題もあり、一度は各事項をていねいに整理しておくべきである。

正解(3)

(3)誤り。
→逮捕は、被疑者の身体の自由を拘束することであるから、この場合、手錠を施した時点で逮捕行為は完了している
→一度逮捕行為を完了すれば、その時点で当該逮捕状の効力は消滅する
(1)正しい。
→逮捕状の呈示は、憲法が要求する「逮捕理由の告知」(34条)の一つの方法であるから、被疑者がその内容を知ることができる程度に示すことが必要である
→しかし、逮捕状を手渡し、またはそのコピーを手交する必要はない
(2)正しい。
→逮捕状の緊急執行に当たっては、被疑事実の要旨及び逮捕状が発せられる旨の告知を行わなければならない(刑訴法201条2項、73条)
→ここにいう被疑事実の告知の程度については、必ずしも逮捕状に記載されている被疑事実の要旨を逐一告知することを要するものではなく、理由なく逮捕するものでないことを一応理解させる程度に告知すれば足りる
(4)正しい。
→逮捕行為は身体の拘束を完了して、その行動の自由を逮捕者の実力的支配下に収め終わった時に完了する
→問題文の場合、逮捕状を示しただけであり、また逮捕行為は完了していないから、逮捕状の効力は失われていない
(5)正しい。
→「できるだけ速やかに」とは、直ちに、あるいは速やかにというよりも時間的余裕のある概念であると解されている
→遅くとも勾留請求時までには呈示する必要があるとするのが通説である

http://syounin.com/

刑事訴訟法講義

刑事訴訟法講義

刑事訴訟法 第3版 (有斐閣アルマSpecialized)

刑事訴訟法 第3版 (有斐閣アルマSpecialized)