9月22日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑法〈37〉
次は、偽証の罪についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)偽証の罪については、偽証又は虚偽鑑定した者が、その事件の裁判確定前又は懲戒処分前に自白したときは、その刑を減軽又は免除することができる。
(2)偽証罪は、法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をすることによって成立するが、本罪で問題となるのは、民事あるいは刑事訴訟法非訟事件手続などにおける証人である。
(3)その宣誓が尋問前になされたと尋問後になされたとを問わないが、宣誓しなしない証人については偽証罪は成立せず、また、宣誓させるべきでない者に対し誤って宣誓させた場合も同様である。
(4)虚偽の陳述とは、証人が自己の記憶に反する陳述をすることであるが、自己の記憶に反する陳述をしても、それがたまたま客観的真実と一致する場合には偽証とはならない。
(5)刑事被告人については、公判において虚偽の陳述をしても罪とならないが、証人を教唆して偽証なさしめたときは、偽証教唆罪が成立すると解されている。

偽証罪からの出題は、公務執行妨害罪や賄賂罪と比べ多くはないが、偽証罪では論点となるところが少ないので、出題された場合は、確実に得点しておくべき問題の一つである。成立要件である刑法169条の構成要件要素を覚えることは必須である。(1)法律により宣誓した証人が、(2)虚偽の陳述をしたこと、である。

正解(4)

(4)誤り。
→偽証行為の中核は、「虚偽の陳述」であるが、この「虚偽」の意義については争いがある
→客観的真実に反することをいうとする客観説と、証人の記憶に反することをいうとする主観説が対立している
偽証罪は、国家の審判作用の適正を害することにその処罰根拠があり、証人が実際に体験しない事実を陳述すること自体が国家の審判作用を害するものであるから、証人の記憶に反することをいうとする主観説が妥当である(判例)
→したがって、自己の記憶に反する陳述をした以上、たまたまそれが客観的真実に合致していても偽証となる
(1)正しい。
→刑法170条は、「前条の罪を犯した者が、その証言した事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分が行われる前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる」と規定する
→偽証、虚偽鑑定・通訳・翻訳にもとづく誤った審判を、未然に防止しようとする政策的規定である
(2)正しい。
→本罪の主体は、法律により宣誓した証人である(身分犯)
→法律による宣誓は、民事・刑事事件だけでなく、非訟事件、懲戒事件さらに行政事件においても行われる
(3)正しい。
→本罪の行為は、宣誓して虚偽の陳述をすることであるが、虚偽の陳述をしてその後に宣誓する事後宣誓をも含むとするのが判例・通説である(大判明45・7・23)
→宣誓の趣旨を理解できない宣誓無能力者(刑訴法155条など)に誤って宣誓させた場合には、その宣誓は法律上無効であるから、本罪の成立の余地はない
(5)正しい。
→わが国では、刑事被告人については、宣誓して証言するという制度がないので、公判廷で虚偽の陳述をしても罪とならない
→しかし、他人を教唆して自己の刑事被告事件について偽証させた場合のように、他人を罪に陥れてまで自己の利益を図ることまで許容されるものではなく、偽証教唆罪が成立する(最決昭28・10・19)

http://syounin.com/

刑法基本講義―総論・各論

刑法基本講義―総論・各論

たのしい刑法 第2版

たのしい刑法 第2版