9月24日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

論文問題 刑法〈10〉

甲は、A市中心地の住宅密集地帯に所在する築後25年を経過した他人の工場(平屋木造瓦葺)に放火し、約100平方メートルを全焼させた。この結果、同工場と1.5メートル離れた同一敷地内にある住宅2棟も全焼させてしまった。同工場は夜間警備員もおらず無人であるが、甲は放火するに際し、当時風が強く、空気が乾燥していたので「他の建物に燃え移ってもかまわない」という気持ちで放火したと供述している。
甲の行為について、現住建造物等放火罪、非現住建造物等放火罪、延焼罪の成立の余地を述べなさい。
⇒本問では、「現住建造物等放火罪、非現住建造物等放火罪、延焼罪の成立の余地を述べなさい。」とあるので、「甲の罪責について述べよ。」という問題より答案構成が容易になっている。ヒントのあるこういう問題で、事例問題の解き方・書き方を学んで欲しい。また、延焼罪(111条)の成立要件(構成要件要素)を確認し、ここで憶えてしまって欲しい。

答案構成例
1.現住建造物等放火罪
2.非現住建造物等放火罪
3.延焼罪
4.事例の検討
5.結論

1現住建造物等放火罪
(1)客体
→現に人が住居に使用し、又は現に人がいる建造物等である
(2)住居
→「現に人の住居に使用し」とは、放火の当時人が日常生活の場所として使用しているという意味である
(3)現在性
→住居として使用されていない建造物等は、人が現在していない限り本罪の客体とはならない
(4)行為
→本罪の行為は、「火を放つ」ことであり、焼損に至って既遂となる
2.非現住建造物等放火罪
(1)客体
→現に人の住居に使用されておらず、しかも、人が現にその内部にいない建造物等である
(2)行為
→自己所有の非現住建造物等放火罪については、具体的公共の危険の発生が要件とされている点で現住建造物等放火罪と異なっているが、それ以外では現住建造物等放火罪と共通である
3.延焼罪
→自己所有非現住建造物等放火罪又は自己所有建造物等以外放火罪を犯し、それによって現住建造物等又は他人所有非現住建造物等に延焼した場合に成立する
→すなわち、自己所有物件に対する放火罪の結果的加重犯である
4.事例の検討
(1)現住建造物等放火罪
→甲が放火したのは、夜間無人となっている工場であるから、非現住建造物等放火罪が成立するとも考えられる
→しかし、甲は、当時風が強く、空気も乾燥していたので「他の建物に燃え移ってもかまわない」という気持ちで放火したと供述しており、住宅に放火することについての未必の故意が認められる
→したがって、甲には、現住建造物等放火罪が成立する
→なお、工場を焼損した非現住建造物等放火罪は、住宅を焼損した現住建造物等放火罪に吸収され、別罪を構成しない
(2)延焼罪
→本罪は、自己所有物件に対する放火罪の結果的加重犯であるから、他人所有の工場に放火した本問の場合、延焼罪は成立しない
5.結論
→甲には、現住建造物等放火罪が成立する

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