4月13日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑訴法〈15〉
次は、逮捕についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)逮捕状の緊急執行が発付されている窃盗被疑者甲を発見したので、甲に逮捕状を示して逮捕しようと手を掛けたところ、甲は警察官を突き飛ばし、手を振り切って逃走してしまった。この場合、後日、甲を発見したときも同一逮捕状で逮捕することができる。
(2)通常逮捕と緊急逮捕は、逮捕後の司法警察員への引致、検察官への送致等の手続は、両者とも同じである。
(3)私人が逮捕した現行犯人の引致を受けた場合の送致時間の起算点は、私人が現行犯人を逮捕した時である。
(4)窃盗被疑者甲を逮捕するため、甲方に赴く途中、所持していた逮捕状を紛失した。この場合逮捕状の緊急執行により甲を逮捕することはできない。
(5)緊急逮捕及び通常逮捕の逮捕状の請求は、共に指定司法警察員がしなければならない。

⇒通常逮捕、緊急逮捕、現行犯逮捕のそれぞれの要件とその意味をしっかりと押さえておく必要がある。逮捕状の緊急執行についても、本問のように肢文の一つとして問われるだけでなく、独立した一問としての出題例が多く、要注意である。要件だけでも憶えておく必要がある。

正解(5)
(5)誤り。
→逮捕状の請求権者は、通常逮捕の場合は、問題文のとおり(199条2項)
緊急逮捕の場合は、このような制限はないから、刑事訴訟法上は、司法巡査にも請求権がある
→実務上は、逮捕権の適正な運用を図るため、指定司法警察員若しくは司法警察員が請求することとされている(犯罪捜査規範120条1項)
(1)正しい。
→逮捕状は、被疑者を逮捕したことによりその効力を失う
→甲は、未だ逮捕されていないから、後日甲を発見した場合、有効期間内であれば同一逮捕状で逮捕することができる
(2)正しい。
→逮捕の種別のいかんにかかわらず被疑者を司法警察員に引致しなければならない(202条、211条、215条1項、216条)
司法警察員は、逮捕の種別のいかんにかかわらず、被疑者を釈放しない限り、被疑者の身体が拘束された時から48時間以内に検察官に送致しなければならない(203条1項後段、211条、216条)
(3)正しい。
→48時間という制限時間の起算点は、「被疑者が身体を拘束された時」、すなわち、被疑者が現実に逮捕され、逮捕者の実力支配下に置かれた時である
(4)正しい。
→逮捕状の緊急執行(201条2項、73条3項)の要件は、逮捕状を所持しないためこれを提示することができないこと及び急速を要することである
→「急速を要する」とは、逮捕状の到着を待っていたのでは逮捕の目的を達し難い場合をいうから、逮捕状を紛失した場合はこれに当たらず、逮捕状の緊急執行で逮捕することはできない
緊急逮捕の要件である「緊急性」もないから、緊急逮捕することもできない
→もう一度逮捕状を請求した上で逮捕する

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刑事訴訟法 第3版 (有斐閣アルマSpecialized)

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刑事訴訟法判例百選 (別冊ジュリスト (No.174))

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