4月12日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑法〈15〉
次は、公務執行妨害罪についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)公務執行妨害罪の保護法益は、公務員個人ではなく公務員によって執行される公務そのものである。
(2)本罪の成立には、暴行・脅迫によって公務の執行が現に妨げられたという結果の発生を必要としない。
(3)違法な公務の執行に対しては、相手方が相当な手段を用いて反撃しても犯罪を構成しない。
(4)公務執行妨害罪における暴行は、公務員に向けられた有形力の行使であれば公務員の補助者に加えられる場合でもよいし、物に対して加えられる場合でもよい。
(5)本罪の客体は公務員であり、いわゆる「みなし公務員」は含まれない。

公務執行妨害罪については、毎年のようにどこかの県で出題されている頻出問題である。成立要件を暗記するだけでなく、その用語の意義、それにかかわる重要判例も理解しておく必要がある。

正解(5)
(5)誤り。
→本罪の客体は公務員であるが、特別法によって「公務に従事する職員」とみなされる者は、刑法7条によって刑法との関係においては公務員として扱われる
→「みなし公務員」または「準公務員」と呼ばれる
(1)正しい。
→本罪の保護法益は、公務員ではなく、広義の公務、すなわち、国または公共団体の作用である(最判昭28・10・2)
(2)正しい。
→本罪は、暴行・脅迫が加えられたことによって、ただちに既遂に達し、公務員の職務の執行が現実に妨害されたことを必要としない(最判昭25・10・20)
(3)正しい。
→公務員の職務の執行は、適法になされなければならない
→刑法にはその旨は明示されていないが、解釈論上、当然にこの要件を加えるべきものとするのが判例・通説である
→したがって、公務員の違法行為によって権利を侵害される者が、防衛のためその公務員の違法行為を妨害することは正当防衛であって、本罪を構成しないばかりか、事情によっては、さらに、暴行罪、または脅迫罪の違法性をも阻却する
(4)正しい。
→本罪における「暴行・脅迫」は、ともに、広い意味に解されている(最判平1・3・9)
→すなわち、暴行は、公務員に向けられた不法な有形力の行使であれば、必ずしも直接に公務員の身体に対して加えられる必要はなく、公務員の指揮の下に、その手足となって、職務の執行に密接不可分の関係にある補助者に加えられる場合でもよい(最判昭41・3・24)
→また、物に対して加えられた有形力が、公務員の身体に物理的に強い影響を与えうる場合でもよい(間接暴行)

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刑法判例百選1総論(第6版) 別冊ジュリスト189

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刑法判例百選2各論(第6版) 別冊シ゛ュリスト190 (別冊ジュリスト)

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