4月26日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑法〈17〉
甲女は一人旅に出て、某夜、あるホテルに宿泊した。そこへ、突然乙男が窓から侵入してきて甲女に襲い掛かった。身の危険を感じた甲女は、ホテルに備え付けの花瓶を乙男に向けて投げつけた。そのため、乙男は顔面にけがをして逃げたが、花瓶は破損してしまった。この場合、甲女の刑事責任として正しいのはどれか。
(1)乙男に対しては正当防衛、ホテルに対しては器物損壊罪
(2)乙男に対しては過剰防衛、ホテルに対しては緊急避難
(3)乙男に対してもホテルに対しても緊急避難
(4)乙男に対してもホテルに対しても正当防衛
(5)乙男に対しては正当防衛、ホテルに対しては緊急避難

⇒正当防衛・緊急避難に関する問題では、各々の要件について、満遍なく問われているので、要件の意義・判例等を理解した上で、要件を必ず暗記しておくこと。また、正当防衛については、緊急避難との対比で出題されることが多く、両者の要件を比較検討し異同を理解しておく必要がある。

正解(5)
(5)正しい。
→甲女が乙男を負傷させた行為は、乙男が甲女に突然襲い掛かかるという「急迫不正の侵害」に対して、「身の安全を守るため」に「やむを得ずにした行為」(花瓶を投げつけた行為は防衛行為として相当である)であり、正当防衛となる
→以上から、(2)、(3)は誤りとなる
→乙男が甲女に突然襲い掛かかっているから、「現在の危難」という要件を満たし、また、甲女にとって、花瓶を投げ付ける以外に自己の身の安全を守る方法がなく、「やむを得ずにした行為」いといえるので「補充性の原則」の要件を満たす
→さらに、甲女の身の安全は、花瓶の価値に比べ大きいといえるので「法益権衡の原則」も充足している
→したがって、甲女がホテルの花瓶を壊した行為は緊急避難となる
→以上から、(1)、(4)は誤りであり、(5)が正解となる
→なお、条文上(刑法36条、37条1項)は、正当防衛・緊急避難ともに「やむを得ずにした行為」を要件としているが、両者にとって「やむを得ずにした行為」という要件の内容の程度が異なる点に注意を要する(緊急避難ではこの要件を厳格に解釈するが、正当防衛では緊急避難よりも緩やかに解釈されている)

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判例刑法総論 第5版

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判例刑法各論 第5版

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