6月4日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

論文問題 憲法〈6〉

警察官2名が、パトカーで管内を警ら中、通信指令室から「3人の男が女性1名を車で連れ去った。」との通報を受理し、付近の捜索を行っていたところ、民家の駐車場に手配されている車を発見した。
同民家から人が殴られるような音と、女性の叫び声が聞こえたので、民家に立ち入ったところ、中で血を流して倒れている女性とその周りに3人の男が立っているのを発見したことから、同人等を傷害の現行犯人として逮捕した。
憲法に規定する住居の不可侵について言及し、警察官の立入り行為について説明しなさい。

答案構成例
1.住居の不可侵
(1)意義
(2)令状主義
2.警職法上の立入りと憲法35条
(1)憲法35条と行政上の立入り
(2)警職法6条1項の立入り
3.事例の検討
4.結論

1.住居の不可侵
(1)意義
→住居の不可侵とは、居住者の承諾なくして住居への侵入、捜索を受けることのない権利をいう
(2)令状主義(憲法35条)
→この権利を制限しうるのは、原則として、裁判官が発する「捜索する場所及び押収する物を明示する令状」がある場合だけである
→例外として、正当な逮捕に際して侵入、捜索、押収がなされる場合には令状なしでもよいとされている
2.警職法上の立入りと憲法35条
(1)憲法35条と行政上の立入り
憲法35条の令状主義は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続についても、一定の限度でこの原則の保障が及ぶとされている(判例・通説)
(2)警職法6条1項の立入り
→人の生命、身体又は財産に対し危害が切迫した場合、危害を予防し、損害の拡大を防ぎ、又は被害者を救助するため、やむを得ないときは、合理的に必要と判断される限度において他人の住居等に立ち入ることができる(即時強制)
3.事例の検討
→警察官2名は、通信指令室からの通報のもと、民家の駐車場に手配の車を発見し、民家からの女性の叫び声などから、人の生命・身体に危害が切迫し、被害者を救助するためやむを得ないと判断して民家に立ち入ってものであるから、警職法6条1項にもとづく適法な行為である
4.結論
→このように警職法6条1項の立入りは、刑事責任の追求を目的とせず、行政上の緊急性・必要性がある場合に行うものであるから、令状がなくても憲法35条の令状主義に反するものではない

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別冊ジュリスト No.186 憲法判例百選1

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憲法判例 第6版

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