8月24日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑訴法〈33〉

次は、逮捕の現場での捜索・差押え・検証についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)通常逮捕状を持って被疑者を逮捕に行ったところ、被疑者が近所の友人の家に逃げ込んだ場合には、その家の主人の意向にかかわらず、その中に入って被疑者を捜索することができる。
(2)被疑者の捜索のため急速を要する場合であっても、公務所については、法律上その長又はこれに代わるべき者に通知して、その立会いを求めなければならない。
(3)盗品を所持し窃盗罪の容疑が充分であるとして緊急逮捕する場合には、まず、その盗品を差し押さえてから逮捕してもよいし、又は逮捕した後にその盗品を差し押さえてもよい。
(4)逮捕の現場における捜索・差押えの対象となる物は、被疑者を逮捕する理由となっている犯罪事実に関係ある物のほか、他の余罪に関する証拠品等も含まれる。
(5)捜索又は検証には身体検査が含まれているので、「スリ」を現行犯逮捕した場合、警察官が必要と認めれば、その場で「スリ」の服を脱がせ盗品等を探すことも差し支えない。

⇒逮捕の現場での捜索・差押えに関する刑訴法220条は、よく問われる項目の一つである。「逮捕する場合」・「逮捕の現場」の意味が、具体例で問われることが多い。

正解(4)

(4)誤り。
→逮捕の現場での捜索等の対象となる物は、逮捕理由となっている被疑事実に関する証拠物に限られる
(1)正しい。
→被疑者を逮捕する場合において必要があるときは、令状なくして人の住居に入り被疑者の捜索をすることができる(刑訴法220条1項1号、3項)
→被疑者以外の住居の場合、被疑者の存在することが客観的に認められる状況が存在しなければならない
→問題文の場合、「近所の友人の家に逃げ込んだ」とあるので、この要件を満たす
(2)正しい。
→急速を要する場合でも、公務所については、私人の住居等のように立会いを不要とする規定がない(222条2項参照)
→したがって、その長又はこれに代わるべき者に通知して、その立会いを求めなければならない
(3)正しい。
→「逮捕する場合」(220条1項)とは、逮捕との時間的接着を必要とするが、逮捕着手の前後関係を問わない(最判昭36・6・7)
→したがって、盗品の差押えは、逮捕の前でも後でもよい
(5正しい。
→捜査機関が逮捕の現場で行う捜索又は検証には、身体検査(身体の捜索)が含まれる(222条1項、102条1項、129条)
→したがって、警察官が必要と認めれば、その場で服を脱がせ盗品等を捜索することができる
→ただし、身体の捜索であっても、被疑者を全裸又はこれに近い状態にするような場合は、人権の問題であって、被疑者の名誉に関わることであるから、手続を慎重にするために、218条2項を準用して身体検査令状が必要であると解されている

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刑事訴訟法 (法律学講義シリーズ) 第5版

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