9月16日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

刑訴法〈36〉
次は、自白の補強証拠について記述したものであるが、判例・通説に照らして誤っているものはどれか。
(1)被告人の自白のみを証拠としては有罪にできないという証拠法上の決まりを補強法則といい、この被告人以外の自白を補強証拠という。
(2)被告人が嫌疑を受ける前に作成した備忘録、手帳等も、自白に対する補強証拠となり得る。
(3)自白が補強を要する範囲については、犯罪の実行行為に関する部分(客観的側面)及び犯意、知情等(主観的側面)の全部又は重要な部分について補強証拠が必要である。
(4)補強証拠は、自白の真実性を保障するものであれば客観的事実の一部について存すれば足り、また、間接証拠、直接証拠のいずれであってもよい。
(5)共犯者も被告人にとっては第三者であり、共犯者の自白も被告人自身の自白ではないので、その補強証拠となり得る。

⇒「自白」に関しては、その傾向を見ると、その意義、任意性、証拠能力からの出題も多いが、本問で問われている自白の補強証拠(証明力)についての出題が中心となっている。「自白に補強証拠を必要とする理由」、「補強証拠を必要とする自白」、「補強証拠になりうる証拠」、「補強証拠の必要な犯意」等について整理しておく必要がある。

正解(3)

(3)誤り。
→補強証拠は、自白と相まって犯罪事実を認定するものであるから、犯罪の客観的事実について必要である
→犯罪の客観的事実とは、犯罪事実から主観的側面(故意・過失など)を除いた犯罪の行為と結果である
→しかし、補強証拠は、犯罪事実の客観的側面の全部について必要はなく、判例は、自白の真実性が担保できる範囲の事実についてあれば足りるとしている(最判昭26・3・9)
→これは、判例が補強証拠を必要とする主たる理由を、被告人の虚偽の自白に基づく誤判のおそれを防止することにあると解していることから導かれる結論である
(1)正しい。
憲法38条3項は、「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」とし、これを受けて刑訴法319条2項は、「被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない」と規定している
(2)正しい。
判例は、被告人が犯罪の嫌疑を受ける前にこれと関係なく、自らその販売未収金関係を備忘のため、闇米と配給米とを問わず、その都度記入した備忘録は、被告人の公判廷の自白の補強証拠とになるとした(最判昭32・11・2)
(4)正しい。
判例は、問題文のような考え方をとる
→(3)の解説参照
(5)正しい。
判例は、いわゆる練馬事件(最判昭33・5・28)以降は、一貫して、共犯者は、共同審理を受けているか否かにかかわりなく、被告人にとっては第三者であるから、その供述は一般の証人の供述と同様に取り扱えば足りるとしている
→したがって、共犯者の自白も、相手方の自白の補強証拠となり得る

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刑事訴訟法 第3版 (有斐閣アルマSpecialized)

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判例講義 刑事訴訟法

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