8月6日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

行政法〈8〉

A警察所管内の山間にあるB地区では、折からの豪雨により所々で土砂崩れが発生し、町は地区の住民に対して避難勧告を出し、広報車による呼びかけを行った。
ところが、最も山よりの地域に住む独居老人甲は、「死ぬときは自分の家で。」と言い張り勧告に応じようとしない。
同家の裏山は、前年の大雨の際にも一部土砂崩れを起こしていたため、町は警察に対して協力を求めてきた。
この場合、現場に出動した警察官のとるべき警察官職務執行法上の措置について説明しなさい。

答案構成例
1.避難等の措置の意義
2.避難等の措置の要件
3.避難等の措置の手段
4.災害対策基本法との関係
5.事例の検討

1.避難等の措置の意義
→人の生命、身体又は財産に対する差し迫った危険がある場合に、危険な事態の発生を防止し、又はその危険の下にある人を救助することは警察の重要な責務である
→危険な事態に対処するため、警職法4条は「避難等の措置」について定めている
2.避難等の措置の要件
警職法4条の権限を行使できるのは、「人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼすおそれのある危険な事態がある場合」である
→危険な事態は、単に抽象的なものではなく、現実に具体的危険が生じていることを要する
→危険な事態として条文中に挙げられている天災・事変・工作物の損壊・交通事故・危険物の爆発等は例示であり、これらと同様に人に危険を与える自然現象・社会現象が広く含まれる
3.避難等の措置の手段
(1)警告
→危険な事態がある場合においては、警察官は、その場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に必要な警告を発することができる
→警告とは、危険からの避難又は危険防止について必要な行為を求めることを意味する
→警告は、指導にとどまり、相手方にこれに従う法的義務を課すものではない
(2)強制的措置
→特に急を要する場合、すなわち、現実にその危険が切迫し、強制手段を用いなければ危険を避けることができない状態にある場合には、警察官は以下の措置をとることができる
ア.危害を受けるおそれのある者に対し、その場の危険を避けるために必要な限度でこれを引き留め、又は避難させること
イ.その場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に対し、危害防止のため、通常必要と認められる措置をとることを命じること
ウ.危害防止のために通常必要と認められる措置を自らとること
4.災害対策基本法との関係
災害対策基本法によれば、災害の場合に避難のための立ち退きを指示することや警戒区域を設定することについては、市町村長が行うこととされている
→警察官は、市町村長が行うことができないとき及び市町村長から要求のあったときにのみ同法上の権限を行使することとされている
→警察官の権限は、当該優先する他の機関等の権限と要件及び効果を同一にする範囲で制約を受けるにとどまり、警察官には警職法4条等に基づき、その他の避難、救助等の措置を講ずる義務がある
5.事例の検討
→事例の場合、豪雨による土砂崩れが発生しており、人の生命・身体に危害を及ぼす危険な事態がある場合に当たるので、避難等の措置の要件を満たしている
→現場に出動した警察官は、甲に対し、警告としての「避難勧告」をすることができる
→甲が避難勧告に従わない場合には、強制的措置として、危害を避けるため甲を避難させることができる

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注釈 警察官職務執行法 再訂版

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ヴィジュアル法学事例で学ぶ警職法

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