8月26日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

憲法〈33〉
次は、憲法31条「法定手続の保障」についての記述であるが、誤りはどれか。
(1)本条は、刑事手続法定主義を規定するのみにとどまらず、その前提として刑事手続による生命の剥奪、自由の制限等の要件を法律によって定めなければならないとする罪刑法定主義をも規定している。
(2)刑事裁判において、起訴されていない余罪を犯罪事実として認定した上、これを実質上処罰する趣旨で量刑に考慮し重く処罰することは、本条に違反し許されないが、量刑のための情状資料として余罪を考慮することは許される。
(3)刑罰法規の犯罪構成要件が不明確なため、その法規が本条の違反となるのは、通常の判断能力を有する一般人が、罪となる行為と罪とならない行為とを識別する基準が不明確な場合であるとするのが判例の立場である。
(4)行政手続についても、刑事手続と同様に本条の枠内にあるので、行政処分によって被処分者の権利を侵害するおそれがある場合には、公益の内容、程度を問わず、その者に事前の告知、弁解の機会等を与えなければならない。
(5)法廷等の秩序維持に関する法律で、裁判所の職務執行を妨害した者に科する、いわゆる「監置処分」について、判例は、裁判所の面前の現行犯的行為に対して自ら適用するもので、本条の適用範囲外であるとしている。

憲法31条は、人身の自由の保障に関する根本原則を定めたもので、出題も多い。公権力を手続的に拘束し、人権を手続的に保障しようとする趣旨であり、人権保障にとって極めて重要な視点であるとされている。

正解(4)

(4)誤り。
→一般に、行政手続は刑事手続とその性質に差異があり、また、行政目的に応じて多種多様である
→したがって、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、緊急性等を総合考量して決定されるべきものである
→それ故、常に必ず事前の告知等の機会を与えることを必要とするものではない(最大判平4・7・1)
(1)正しい。
→本条は、刑罰の内容を定める実体法は法律で定めることを要するという罪刑法定主義についても規定していると解するのが通説である
(2)正しい。
→公訴事実のほかに、起訴されていない犯罪事実を余罪として認定し、これをも実質上処罰する趣旨の下に、被告人に重い刑を科すことは、不告不理の原則に反し本条に違反する
→しかし、量刑は被告人の性格・経歴及び犯罪の動機・目的・方法等すべての事情を考慮して、裁判所が法定刑の範囲内で決定すべきものであるから、量刑のための一情状として余罪を考慮することは禁じられるものではない(最大判昭42・7・5)
(3)正しい。
最大判昭60・10・23は、福岡県青少年保護育成条例事件において、同条例3条1項の「淫行」の解釈について、問題文のように判示している
(5)正しい。
→法廷等の秩序維持に関する法律による制裁は、従来の刑事的・行政的処罰のいずれの範疇にも属しない特殊の処罰であり、裁判所又は裁判官の面前の現行犯的行為に対して自らによって適用されるものであるから、この場合は憲法の要求する諸手続の範囲外にある(最大決昭33・10・15)

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憲法 第四版

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