4月2日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

論文問題 刑訴法〈3〉
A巡査部長らは窃盗事件捜査のため、被疑者甲宅について裁判所から捜索差押許可状の発付を受け、被疑者の妻を立会人として捜索を実施した。
甲宅内では目的物の発見に至らなかったが、同一敷地内のガレージに駐車している被疑者所有の普通乗用車の中にその物が隠されている可能性が高かったため、立会人の承諾を得て、鍵を借りてその車内を捜索したところ、当該目的物を発見したので差し押さえた。
A巡査部長らが行った捜索・差押えの適否について述べなさい。
答案構成例
1.捜索・差押えと令状主義
2.捜索場所
3.自動車の捜索
4.捜索・差押えの実施
5.事例の検討
6.結論

1.捜索・差押えと令状主義
→捜索・押収についての令状主義は、憲法35条で保障されている
→これを受けて刑訴法は、捜査機関が捜索・差押えをするためには「裁判官の発する令状」によらなければならないこと(218条1項)、その令状には「罪名」「差し押えるべき物」「捜索すべき場所」等を記載することを要件とする(219条1項)
2.捜索場所
(1)捜索場所の明示
→捜査機関が捜索することができる場所は、令状に記載された場所である
→記載される内容は、社会通念に照らし、合理的に解釈してその場所が客観的に特定でき、他と区別できる程度に記載されればよい
(2)令状の効力の及ぶ範囲
→捜査機関が捜索することができるのは、「身体、物又は住居その他の場所」である
→「身体、物又は住居その他の場所」とは、被処分者が現実に支配している物又は住居等をいう。
→住居については、被処分者が現実に管理している付属建物・敷地にも令状の効力が及ぶ
3.自動車に対する捜索
(1)公道又は自動車の所有者・使用者以外の敷地にあるとき
→自動車に対する捜索令状がなければ自動車内を捜索できない
(2)自動車の所有者・使用者の住居の敷地内にあるとき
→付属建物に準じ、住居に対する捜索令状によって、自動車内を捜索することができる
4.捜索・差押えの実施
(1)住居主等の立会い
→住居主等、又はこれらの者に代わるべき者の立会いが必要である
(2)捜索・差押えに必要な処分
→錠をはずすなど
5.事例の検討
(1)自動車内の捜索
→甲宅の捜索差押許可状の効力は、被処分者甲が現実に管理している同一敷地内のガレージにも及ぶ
→ガレージ内の普通乗用車は、被処分者甲が所有するものであるから、付属建物に準じ、住居に対する捜索令状で自動車内を捜索することができる
(3)捜索・差押えの実施
→住居主に代わるべき者として、甲の妻を立ち会わせたことは妥当である
→立会人である甲の妻の承諾を得て鍵を借り車内を捜索したことは、捜索・差押えに必要な処分であり、妥当である
6.結論
→A巡査部長らが行った捜索・差押えは適法である

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条解刑事訴訟法

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ケースブック刑事訴訟法 第3版

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