6月18日「今日の模擬試験」配信分のメッセージ

こんにちは。水野です。

論文問題 刑法〈6〉
甲と乙は、A方に窃盗に入ることを共謀の上、深夜、A方に侵入し、現金30万円を盗み出したが、物音で目を覚ましたAに見つかったため、二手に分かれ逃走した。乙は逃げることができたが甲はAに捕らわれそうになったため、逮捕を免れようとして、所携のナイフでAを切りつけ傷害を負わせた。
甲、乙の罪責について論ぜよ(住居侵入罪については論外とする)。

答案構成例
1.共同正犯
2.事後強盗罪及び強盗傷人罪
3.共同正犯の錯誤
4.結論

1.共同正犯
→二人以上が共同して犯罪を実行した場合を共同正犯という(刑法60条)
→その成立には、ア.共同実行の事実、イ.共同実行の意思とが必要である
→甲と乙とは、窃盗することを共謀し、共同してA方から現金30万円を盗み出しているから、窃盗罪(刑法235条)の共同正犯となる
2.事後強盗罪及び強盗傷害罪
(1)事後強盗罪
→事後強盗は、窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために暴行又は脅迫をしたときに成立する(刑法238条)
→窃盗犯人である甲は、Aに捕らわれそうになったため、逮捕を免れようとしてナイフでAを切りつけているから、逮捕を免れるために暴行・脅迫をしたことになり、事後強盗罪となる
→本罪の暴行・脅迫は、相手方の反抗を不能若しくは著しく困難にする程度のものであることを要するが、ナイフで切りつけることは、この程度のものに当たる
(2)強盗傷人罪
→強盗が、人を負傷させれば、強盗傷人罪が成立する(刑法240条)
→強盗犯人である甲は、故意にAを切りつけ傷を負わせているから、強盗傷人罪となる
3.共同正犯の錯誤
→共同正犯の錯誤とは、共謀にかかる犯罪事実の内容とその共謀に基づき実行された犯罪事実との間に食い違いがある場合をいう
判例・通説である法定的符合説によれば、食い違いが同一構成要件内であれば共同正犯の故意は阻却されない
→異なった構成要件間であるときは、原則として共同正犯の故意は否定されるが、それぞれの構成要件が同質的で重なり合う場合には、重なり合う限度で共同正犯の故意を認めることができるとする
→窃盗罪と強盗傷人罪とは、異なった構成要件であるが、占有者の意思に反して財物を奪取するという点では共通であるから、窃盗罪の限度で重なり合う
→したがって、共同正犯は窃盗罪の限度で成立する
4.結論
→甲と乙には、窃盗罪の共同正犯が成立し、強盗傷人罪は甲のみに成立する

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